人材派遣の道 > 派遣の知略! > 法律は守ってくれない


法律は守ってくれない


法律と業界の不祥事の裏側

ここ数年、アウトソーシング業界、つまり、派遣社員やアルバイトなどの人材派遣会社の不祥事が、立て続けに明るみに出ています。中でも多く見られるのが、管理費や維持費といった名目で1日の給与から数百円を天引きしていたという、悪質な中間搾取の手口です。

労働基準法において、労働者の給与は「通貨で全額支払われなければならない」とされています。しかも、不祥事を起こした企業は「任意での徴収」だと強調していますが、実質は強制的に天引きされていたと見られており、事実上は派遣元が給与を違法にピンハネしていただけのようです。

このような行為は、明らかに違法です。しかし、法律を知らない労働者だと、「そんな料金が差し引かれるものなんだな」と思うだけで、知らずに派遣元から不法な搾取を受け続けてしまうかもしれません。実際、このような不祥事が発覚するまでの間に長い時間がかかっていた背景には、訴えたくても訴えられなかった労働者がいる一方で、この給与からの天引きが違法だとは知らなかった労働者もたくさんいたはずです。

労働基準法や労働者派遣法は、確かに労働者を保護する法律を定めてはいますが、自ら動いて労働者を守ってくれるものではありません。労働者が法律について知り、それに照らし合わせて告発しない限り、派遣会社も自社の不利益になることはしません。

法律は、労働者を守ってくれるものではなく、労働者が自分自身を守るための武器でしかないのです。労働者が動かない限り、その効力は発揮されません。

法律を知っておかないと…

上記のような例では、一般の派遣社員の方にはあまり実感が湧かないと思いますので、もう一つ例を挙げてみたいと思います。

3ヶ月ごとの更新で1年の派遣契約を結んで働いていたYさんは、一度目の更新を終えた数日後に、突然理由も知らされずに派遣先から契約解除を言い渡されました。その後、派遣会社の担当者からは、次の仕事を紹介するまで待機してくれとの連絡がありました。結局、数週間の間待機した後、他の派遣会社で新しい仕事を紹介され、その仕事を始めました。

この例の場合、法律によってどのような対策を取れるかをすぐに導き出せる方は、それほど多くないのではないでしょうか。法律について良く知らないまま、「派遣先が解雇するって言ったのだから仕方がない」などと諦めてしまうと、更新したはずの契約をいきなり解除され、それに対する手当もないままに次の仕事に就き、これまでのことはなかったことにされてしまいます。

上記の例の場合、Yさんは「契約解除を受け入れる代わりに、解雇30日前までに行わなかったことを理由に、派遣会社30日分の解雇予告手当を求める」か、「更新した契約の残り期間分の休業手当を求める」ことができます。いずれも、およそ1ヶ月分の給与の60%ほどを派遣会社から受け取ることが可能です。また、この派遣会社には次の仕事をYさんに紹介する努力義務もあります。

もしくは、以上のように契約解除を受け入れるのではなく、派遣先による不当な契約解除だとして、労働局などに相談すると共に、契約解除の無効を訴えることもできます。しかし、こちらの場合は手続きや交渉に時間がかかり、その間の収入の確保が難しく、その上契約解除となった後に同じ職場に復帰するのも心情的に負担が大きいため、手当を受け取り次の仕事に就く方が妥当と言えるかもしれません。

以上のように、使用者の都合で不当かつ突然に解雇された場合は、労働者が手当を受け取って次の仕事に就くまで生計を立てられるよう、法律によって定められています。

しかし、法律を知らなかったら、派遣先に都合良く使われ、一方的に契約を破棄され、手当ももらえず、派遣会社も手当を払いたくないためにダンマリ……そんなことになっていたかもしれないのです。むしろ、法律を知らないばかりに、そんな不当な状況を、普通のことだと思って受け入れている方も、少なくないのです。

繰り返しになりますが、法律は労働者を守ってくれるものではなく、労働者が自分自身を守るための武器でしかありません。特に立場が弱く待遇も悪い派遣社員は、自分の身は自分で守るしかないという意識をしっかり持ち、防衛手段である法律の知識をしっかりと頭に叩き込んでおかなければなりません。

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