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産休・育休を拒否されたら


産休・育休は誰にでも保証された権利

「産休・育休の取り方」の項でお話ししたとおり、派遣社員も産休や育休を取ることができます。産休は特に条件なく、育休の場合は以下の条件を満たしていれば、取得することが可能です。

育児休暇を取るための条件
 (1)継続した雇用期間が1年以上あること
 (2)子供が1歳を超えても継続して雇用する見込みがあること

出産して子供を育てる権利は法律上で定められたもので、誰にでも隔てなく与えられています。この点は、正社員だろうが派遣社員だろうがパートだろうがアルバイトだろうが、まったく変わりはありません。

人間が生き物である以上、子を産み育てていくのは当然のことですし、人を雇用する企業も、これを補助するのが当然の義務と言えます。

しかし、そのような常識や理念が通るとは言い切れないのが、今の日本の現実です。

妊娠に対する対応の現実

ある派遣会社で働くAさんは、3ヶ月の派遣契約で働いている途中で妊娠が判明しました。しかし、医師の診断では残り1ヶ月ほどの契約期間は働いていてもまったく問題はないとのことだったので、「産休直前まで働き続ける」という旨を、派遣先の上司に連絡をしました。

ところが、それから数日後にAさんへ派遣会社の担当者から次のような内容のメールが届いたそうです。

「派遣先は、妊娠中で体調の良くない人材は雇用できないとのことです」

事実上、契約期間中の解雇通告です。当然、医師の診断で働いても問題ないとされていて、本人にも働く意思があるわけですから、これは妊娠を理由にした不当な解雇で、違法行為です。例え法律に違反していなかったとしても、社会的な地位を持つ企業やその一員の行為としては、人道にもとる最低のものと言えます。

これに対し、Aさんは派遣会社に対して継続して働きたいと訴えましたが、「派遣先が解雇すると言えば解雇するしかない。それがビジネスというものです」「男が面倒を見る自信がないのなら妊娠させるべきではない」「妊娠は辞める口実としてよく使われている。辞めたくないのならば妊娠したと言ってはいけなかった」というような趣旨の、とても人材を扱う職種の人間が口にしたとは思えないような返事が返ってきたということです。

幸い、Aさんはこの後ユニオン(労働組合)に相談して交渉してもらい、産休・育休の取得と、育休後6ヶ月間の雇用を保証してもらうことができました。しかし、妊娠=即解雇という、法律に違反し、人間的にも社会的にもおよそ道から外れた対応をする企業が実に多いのが現実なのです。

妊娠=解雇は当たり前?

このような現状を見れば、少子化が進むのは当然のことだと言えます。雇用が不安定な今の日本では、労働者全体の3割超が派遣やアルバイト・パートなどのいわゆる非正規労働者です。夫婦も共働きが増え、どちらか片方の収入がなくなると生活が成り立たない家庭も少なくありません。

しかし、企業の多くは妊娠した派遣社員やアルバイト・パートは不当に即解雇して、産休も育休も認めません。このような状況で子供を産み育てろという方が無理というものです。

また、先のAさんの例で、派遣会社の担当者は「妊娠した労働者は切るのがビジネスとして当たり前」「共働きしないと子供の面倒を見れないのなら妊娠させるべきではない」と言った趣旨の発言をしていますが、中にはこの点に賛同する方もいるのではないでしょうか?

長年男性を中心とした社会を構成し、家計は男性が稼ぐ物、非正規労働で働く女性の収入はなくてもさほど影響のない物という観念を持ってきた日本の企業には、先ほどの担当者の発言を当然と捉えているような人が少なくありません。

実際、「労働力として劣る妊婦に産休や育休を与えることを問題視する発言」を、公の場で平気で口にする、過去の遺物のような持論をお持ちの企業トップもいらっしゃるようです。

女性は誰しも妊娠する可能性があり、子供を産み育てることは、社会全体で補助しなければならないものです。女性を雇用しておいて「妊娠したから解雇」「産休も育休も与えられない」では、企業として失格です。「それがビジネスだ」と慣習に倣って言い放っても、女性を雇用するに当たっての責任も果たすことのできない、基盤の脆弱さと経営の不健全さをごまかしているだけに過ぎません。

女性を雇用している時点で、企業は労働基準法や男女雇用機会均等法などの法令を遵守し、社会的な地位を持つ企業として、労働者の権利を保護しなければなりません。法律の立て前ばかりでなく、自社の労働者も守れない企業が、社会にとって何の役に立てると言うのでしょうか。自社の利益ばかり追求して、雇用した人間の権利を奪ってまで利潤とコスト削減と保身に走る、そんな企業や人間にビジネスという名の下に人を雇用する資格はありません。

妊娠した女性を即刻解雇する日本企業の体質は、妊婦の人権侵害であり、少子化の原因でもある悪質なものです。ビジネスという化けの皮を被った金儲けや企業のエゴによる「妊娠即解雇」の慣習は、反社会的な行為を妥協の下に行うための言い訳でしかないのです。

産休・育休が拒否されても諦めない

もし、産休や育休の取得が拒否されたら、Aさんのようにユニオンに相談するのが最も良い方法です。個人からのクレームは無視する派遣会社でも、団体交渉に対しては無視することはできません。

また、妊娠の可能性がある女性の場合は、派遣会社と雇用契約を結ぶ前に、必ず産休や育休についての説明を受け、契約内容を確認してください。産休や育休の規定が適切に行われていない派遣会社や派遣先では、Aさんの例のようなトラブルが起こる危険性もあります。

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